「バカ」は自分が「バカ」であることに気づいていない
というセンセーショナルなテーマからはじまる『バカと無知』という本は、自分を振り返るための最適な本です。
なぜなら、本の題名である「バカと無知」から抜け出すためには、自分のことを的確に「知る」ことが大事だからです。
ただ、自分を知るとは、「やりたいこと」や「得意なこと」を知ると言った自己啓発的な話しではありません。
「ヒト」と言う、生物的/社会的特徴の視点です。
この本を読むと、豊富な事例と科学的根拠から人は誰しも、「バカと無知」に陥る生物的/社会的特徴を持っていことがわかります。
特にビジネスの現場では、明確にその特徴が出ていると実感しました。
この記事では「バカと無知」に陥らないためのアイデアも含めて、ご紹介したいと思います。
自分を客観視することの難しさ
「人並み以上効果」という人間の特性が紹介されています。
「平均と比べてどうですか?」と質問すると
大多数の人が「自分は人並み以上だ」とこたえると言います。
ダニングとクルーガーがその事実に対して、学生にテストを行い、その感触を尋ねるという実験を行いました。
すると上位の学生は自分の能力を客観的に把握しています。
だからこそ
「自分でもこれくらい解けるのだから、他の学生はもっとできるだろう」
と思い、自己評価が低くなる
下位の学生は、自分たちの能力を上方修正していました。
さらに、自分の能力についての客観的な事実を提示されても、その事実を正しく理解できないので、自分の評価を修正しないばかりか、ますます自分の能力に自信を持つようになると言います。
自分は、そんなことは無いと思っていても状況と場合によって、変わるのではと思います。
例えば、ビジネスであれば、懸命な判断ができるのに、家庭のことになるとうまく行かなかったり。
凄く得意なことがあったり、逆に凄く苦手なことがあったりすると、極端な特徴にひっぱられがちです。
状況によって違う、という意識を持つことが大事だと、改めて実感しました。
「知らないことを知らない」
知と無知には、4つのパターンがあります。
①知っていることを知っていること
②知らないことを知っていること
③知らないことを知らない
二重の無知
④知っていることを知らない
暗黙知
認知能力の低い人が自分を過大評価する、というのは先ほどの実験の例にも当てはまります。
まさしく、
③知らないことを知らない
という現象です。
認めたくないかもしれませんが、これは結構ビジネスの現場でもありますよね。
というか新しいテーマは全て、何を知らないのかすら、知らない状況です。
そんなときは、「無知の知」とも言いますが、知らないという事実を明確にすることがまず大事になります。
一方、認知能力の高い者が一貫して自分を過小評価しています。
これは、ヒトという生物的、社会的特徴が影響していると言います。
ヒトは旧石器時代から何百万年も、150人ほどの小さな共同体の中で地位を巡って争ってきました。
評価の基準は時代や環境によって異なるが、能力のある者が高い地位を獲得します。
となると、自分に能力が無いことを他者に知られるのは致命的になことになります。
だから、能力を大幅に過大評価するようになりました。
一方で優れた能力があることを他者に知られることもリスクです。
権力者が真っ先に排除しようとするのは、将来のライバルになりそうな有能なものだから。
なので能力を過小評価し、共同体のなかで極端に目立つことを避けようとした。
というわけです。
こう、本質的なことを例示されると、納得してしまいますよね。
「話し合い」がうまくいかない
「話し合い」の不が紹介されています。
見も蓋もないですが、両方とも賢者なら問題ないと。
しかし、どちらかが劣っていると、引きずられ間違えた結論になってしまう。
先ほどの旧石器の例からすると能力の低い者は、その事実を相手に知られないように、自分の実力を無意識に過大評価します。
一方能力の高い者は、相手も自分と同じ能力を持っているだろうと(当初は)想定します。
何の上方もないときに相手を見くびると失敗するし、共同体のなかで目立ちすぎると、多数派により排斥されてしまいます。
その結果、能力に大きな違いがある2人が話し合うと(自分の能力を過小評価している)賢い人が、(自分の能力を過大評価している)バカに引きずられ、間違った選択をしてしまう。
というイメージです。
これは会社においては、新人と上司の関係性で良く見られるのではないかと。
新人の方が、的を得意見を言っていたとしても、上司の大きな声に潰されてしまう場面、多くありますよね。
大きな声に「引きづられる」ことを防ぐには
こちらも身も蓋もない解が書いてあるのですが、「ある一定以上のレベルの人で会話をする」というものです笑
シリコンバレーが例にあがっているのですが、「多様なバックボーン×賢さレベルが高い」と、とてつもないイノベーションが起こる。
また、「話し合わない」というこちらも極端な例も出ていました。
カリスマ的な創業者のワンマン経営で業績が伸びる
という事例がイメージ着きやすいですね。
とはいえ、「一定以上のレベル」も「話し合わない」もなかなか極端です。
日常レベルに落とし込んでみると、
まず、「自分の頭でしっかり考える」そして「その分野で尊敬する人に話をぶつけてみる」ということではないでしょうか。
自尊心について
みんな「自尊心メーター」を持っていて、無意識のうちに自尊心を高く保とうと努力していると言います。
自尊心が下がるような出来事に遭遇すれば、なんとか回復させようとします。
もともと自尊心が高いひとは「どうすれば自分の能力をもっと発揮できるようになるか」に関心を持ち、自尊心の低いひとは「どうすればもっと他人から好かれるのか」を考えると言います。
そこから、自尊心の高い低いは、「個人主義」と「集団主義」に関係すると言います。
自尊心の高い人は、「自分の能力を活かす」ことで
自尊心の低い人は、「対人関係のスキルを磨く」ことで
危機を乗り越えようとします。
・個人主義的な文化では、自尊心が高いことが評価されます(例:アメリカ)
・集団的な文化では、対人関係が高いことが評価されます(例:日本)
マウンティングについて
安定したヒエラルヒーをつくるためには、誰が誰の上かを決める必要があります。
これがないと組織が機能しません。
なので、軍隊や会社では階級肩書きがあります。
肩書きが無い集団は、マウンティングを行います。
マウンティングとは、順位確認行動といえます。
もともと、集団内の序列の変動は死活問題でした。
なのでヒトの脳は、マウントすることを報酬、されることを損失と感じるようになったと言います。
目立ちすぎると叩かれる、しかし、目立たなすぎてもいけない
という非常に複雑な社会に生きています。
とくに、会社においては肩書きを得られる人は限られています。
だからこそ、「潜在的マウンティング」が横行しているように感じます笑
まとめ
この本には、人間の本質が書かれています。
そして笑ってしまうほど、滑稽な事例も多く、さらに自分の周りで起きていることと関連付けることが出来る、、、
会社での理不尽なできごとのほとんどの理由が、この本に書かれているのではないでしょうか。
嫌なことがあっても。「ヒトにはそもそもそういう特徴があるのだ」と、知ることにより、気にしすぎないようになります。
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