ここ1~2年、サステナブルをキーワードとしたブランディングのテーマが
増えています。
今までは、どちらかというと経営層の課題という認識が強かったですが
今は実務を行う部門の方々も直接の課題として取り組まれています。
そのなかで、サステナブルという言葉は知っている、重要性もわかる
けれど具体的になにからはじめればいのかわからない…
という声も多く聞きます。
この記事では、
パーパスという考え方を明確にして、サステナブルとブランディングを両立していく
視点と具体的な方法を提供したいと思います。
サステナブルな活動とは?
サステナブル(Sustainable)は、sustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉です。
サステナブル活動を平たく言うと、
「持続可能な社会を実現するための、環境的/社会的な課題解決」です。
ブランディングをはじめとした経済活動と、環境/社会における貢献活動
を両立していく視点が、まさに今求められていることです。
なぜ、サステナブル活動が経済活動においても求められているのか?
経済は、環境、社会という土台の上で成り立っています。
持続可能な社会にしていくためには
企業は経済価値だけを追求するのではなく、土台である環境価値、社会価値の向上にも目を向ける必要があります。
生活者もその事実を認識しはじめており、
環境価値、社会価値に配慮をしていない商品サービスは受け入れにくくなってきています。
今後の消費を担うと言われている、Z世代:(1990年代~2000年代に生まれ)は
義務教育の段階で、後述するSDGsの概念などを学びます。
サステナブルの視点があるか?は今後の消費において、必要最低限押さえておかなければならない
要素になります。
環境価値、社会価値とは
では、環境価値、社会価値とは具体的になにか?
2つの視点をご紹介します。
SDGS
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)と呼ばれ、
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17のゴールが設定されています。
1:貧困をなくそう
2:飢餓をゼロに
3:すべての人に健康と福祉を
4:質の高い教育をみんなに
5:ジェンダー平等を実現しよう
6:安全な水とトイレを世界中に
7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに
8:働きがいも経済成長も
9:産業と技術革新の基盤をつくろう
10:人や国の不平等をなくそう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
16:平和と公正をすべての人に
17:パートナーシップで目標を達成しよう
1~6が社会視点
7~12が経済視点
13~15が環境視点
16と17が枠組み になっています。
4つの環境課題と3つの社会課題
SX[サステナビリティ・トランスフォーメーション]の時代という書籍では、
企業が事業のために地球にかけた負担は、企業の責任でしっかり元に戻すという考え方が必須になると言います。
そのためのサステナビリティ経営の課題として、4つの環境課題/3つの社会課題に分けて整理をしています。
4つの環境課題 ■CO2・気候変動:温室効果ガスの排出により温暖化や気候変動を促進 ■水:排水による水質汚濁や大量の取水・消費による水不足が発生 ■資源/廃棄物:包装容器やリサイクル可能な資源がリサイクルされず大量に廃棄 ■生物多様性:事業活動を通じた農地土地の開発による生態系破壊が深刻化 3つの社会課題 ■身体的人権:強制労働/児童労働などにより人的資源が物理的に毀損 ■精神的人権:ハラスメントや差別などにより人的資本が精神的に毀損 ■社会的人権:人間が健康で文化的な最低限度の生活を行うために必要とされる権利が侵害
サステナブル経営とは、上記のいずれかの課題解決と企業活動をつなげていくことです。
CSVについて
環境価値社会価値をつなげる概念としてCSV(Creating Shared Value)という考え方があります。
戦略論の権威であるマイケル・ポーターが2011年の論文で提唱しました。
環境価値社会価値を高めながら、自らの経済価値も高めるという考え方です。
これからの「ブランディング」には、このCSVの視点が重要になります。
最近は様々な会社で「サステナビリティ推進室」のような部署が出来て、
統合報告書として、SDGsの17項目に沿った活動指針や実施報告がされています。
SDGsマテリアリティ分析と題して、下記のようなマトリクスを用いて整理しています。
そして、ほとんどの企業が「Ⅰ」を選んでいます。
社会的に重要で、会社的にも重要なので、
間違えもなく、素晴らしい指針と実施実績であるにもかかわらず、
企業間にほとんど差がなく、似たような内容になってしまっているのが現状です。
差別化する要素がないと、利益を生み出すことも難しく
本業とサステナブル活動を分けて考えてしまう原因でもあります。
CSVの本質である「経済価値」とサステナブル価値(環境価値/社会価値)を融合させていくには、
Ⅱの領域こそが重要になってきます。
自社ならではのこだわり、まだ会社に認識されていないからこそ、「独自」の価値が訴求できます。
例えば
「LifeWare究極の普段着」ユニクロ
「Kirei Lifestyle」花王
「Kaiteki」三菱ケミカル
なのがその代表です。
企業の、メッセージを聞いただけでどの企業なのか?そのような商品サービスを提供しているのかが
認識できることが、独自性をもたらすことになります。
そして、その独自性を出すためにも「パーパス」という考え方が必須になります。
パーパスという考え方
近年、「パーパス」という言葉をよく聞くようになりました。
グーグル検索のボリュームも見てみると
1999 30万件
2000 560万件
2001 2250万件
2019 3億6000万件
20年で1200倍の伸びになっています。
パーパスとは「存在意義」や「企業の約束」と捉えられることも多いですが、
パーパス経営という書籍での定義されている
「志」という言葉が一番しっくりときています。
・なんのために事業をしているのか?
・何を実現したくて事業をしているのか?
といった問いに対する答えがパーパスになります。
しかし、巷で言われるパーパスや企業理念の言葉は
似たり寄ったりのものが多いのも事実です。
社会課題や大きなことを考えるあまり、
どこも同じような言葉になってしまうのでしょう。
「パーパス経営」という書籍では、
ミッションとの対比で、パーパスの本質を説明しています。
ミッション(WHY:存在意義)
ビジョン(What:未来の姿)
バリュー(HOW:共有価値観)
ミッションに近いが、違いは3つあるといいます。
1
ミッションは、自分起点か、社会起点のどちらかの場合が多い。
パーパスは自分の思いと社会の思いが同心円を描く
2
ミッションは、原点回帰か未来志向のどちらかに偏りがち
その企業の本源的な思いに根差していかながら、これkらやることをしめしていかなくてはならない。
パーパスは原点と未来をいかにつなぐかが大事。
3
ミッションは、社外向けになりがちか、逆に社内向けになりがち。
社外を意識すると、社会志向や未来志向のメッセージになりやすい。
社内を意識しすぎると、独りよがりになりがち。
パーパスは社外にとってはその会社らしさが強く伝わり、
社内にとっては外と未来にむけて思いを束ねていく源になる必要がある。
まとめると、パーパスとは
下記3つのポイントを抑えたところに現れます
■自分の思いと社会の思いが重なり合っている
■原点と未来をつないでいる
■社外に「らしさ」が伝わり、社内には「思い」が伝わる
パーパスは企業経営の考えだけではなく、ブランディングにも適用されていきます。
これからのブランディングは、
ブランドのパーパスとはなにか?を考え、
パーパスに沿って活動していくことが重要になります。
これからのブランディングとは
ブランドを買うとは、体験を買うことにもつながります。
蓄積された「体験価値」が、ブランドを「買う理由」につながっていました。
これからの時代、生活者は消費に対して、
自分にとっての意味だけではなく、
環境や社会にとっての意味も考えるようになってきています。
いわば、買う「意義」をつけていく活動がブランディングになっていきます。
これからのブランディングには、生活者視点だけではなく、
環境社会視点も必要になります。
ではブランディングとサステナブルをつなげる活動はどのように進めるのか?
実際に、実務においてお客様と取り組んでいる枠組みを紹介したいと思います。
ポイントはブランドから受ける「生活者のメリット」と「社会/環境のメリット」の
両方から考えていきます。
「ブランディングテーマ」と「サステナブルテーマ」は以前からテーマとしてありました。
別々に進行することが多かったのですが、この2つは別々に捉えるべきではなく
融合させて考える必要があります。
同時に、前述の「パーパス」の重要性についても認識する機会があり
「パーパスコネクティングモデル」というフレームを開発しました
パーパスコネクティングモデル
パーパスコネクティングモデルとは、
「ブランディング」と「サステナブル活動」をつなげる方法論です。
大きく4つの要素から成り立ち、基本的に①から進めていきます。
【パーパスコネクティングモデル:4つの要素】 ①ブランドの体験価値を見直す ②独自のサステナブル視点を定義する ③パーパスを定義する ④具体的施策の策定する
①ブランドの体験価値を見直す
まずは、ブランドの体験価値を見直します。
2つの問いに答える形で進めていきます。
・「顧客が期待していることは何か?」
・「顧客の期待をどのくらい超えられているか?」
期待に応えてもらうことが体験価値につながり、
期待を越えた分が付加価値として蓄積されていきます。
詳しくは、UX=嬉しい体験価値について書いた記事を
参考にしていただければと思います。
嬉しい体験のつくり方:UXという考え | みなもとブログ (minamotog.com)
②独自のサステナブル視点を定義する。
サステナブル活動の具体的な課題として、
SDGsの17項目や、4つの環境課題/3つの社会課題を
紹介しました。
ここで重要なことは、その項目をプロットするのではなく、
ブランドならではの課題の着目、解決の視点から考えるコトを
おすすめしています。
SDGsの独自の18項目目をつくるようなイメージに近いです。
ポイントは、全社でサステナブル活動の指針が出されている場合は、
ブランドや商品と掛け合わせることにより、その活動や解決策を
より具体化していくことです。
③ブランドパーパスを定義する
①で顧客側の体験価値をしっかりと捉え、②でブランド独自のサステナブル課題を
設定しました。
①と②の視点から言語化していき、それをパーパスとして、定義します。
■自分の思いと社会の思いが重なり合っている
■原点と未来をつないでいる
■社外に「らしさ」が伝わり、社内には「思い」が伝わる
という「パーパス3つのポイント」を参考に、明文化をします。
④具体的施策の策定をする
設定したパーパスに基づき、具体的な施策を策定していきます。
2つのポイントに注意をします
・「生活者」と「環境社会」の双方の視点が入っているか?
・双方の比重は、どのくらいか?
ここで定めたブランドパーパスはマーケティング戦略や具体的戦術の指標となります。
実際の活動を振り返る際にも、売上/利益といった財務上の指標だけでなく、
ブランドパーパスの指標も活動評価の軸にいれると、中長期的にブレずに活動をすることが出来ます。
結果パーパスが、顧客との関係性をより強くするポイントになり、社内の結束も強固にします。
まとめ
■サステナブル活動
「持続可能な社会を実現するための、環境的/社会的な課題解決」
※環境課題は4つのカテゴリ、社会課題は3つのカテゴリにわけられる
■経済価値と環境/社会価値の両立という「CSV」の考え
■CSVには「パーパス」という視点が必要
■「パーパス」とは
「存在意義」や「約束」を明示化した「企業の志」
■これからのブランディングも、「パーパス」を軸にサステナブル活動と融合させていく必要がある
■ブランディング×サステナブルの具体的な方法として
「パーパスコネクティングモデル」を考案
■「パーパスコネクティングモデル」
①ブランドの体験価値を見直す
②独自のサステナブル視点を定義する
③パーパスを定義する
④具体的施策の策定する
以上、ブランディング×サステナブルは今後必須になってくる考え方だと思います。
自分自身も、日々アップデートをしながら取り組んでいきたいと思います。
さらに詳しく勉強をしたい方は、
今回参考にさせて頂いた、
「パーパス経営」
「SXの時代」
を一読頂くと、さらに理解が深まると思います。
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