『生涯投資家』はビジネスの本質を学ぶにも最適な本

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「投資家」の思考とは、どのような思考法なのだろう?

と気になっていたので、『生涯投資家』という本を手に取りました。

かつて世間を賑わせた、村上ファンドの村上世彰氏が書いた本です。

実際に読んで見て感じたことは、

「投資家」の思考は、ビジネスとしての本質思考である

ということです。

言葉の定義が明確で、何気なく使っていた言葉の理解も深まりました。

経営の目的は、「企業価値」をあげることです。

そして日々の業務も全て、企業価値向上につながっている。

この場合の企業価値は、将来得られるFCF(フリーキャッシュフロー)がベースになっています。

パーパスや、サステナブルなど概念的な要素ではなく、「利益」というお金をベースにしているところが機能的ではありますが非常に明確です。

今おこなっているこの仕事は、将来いくらのお金を生むのだろうか?

この視点は、仕事の優先度をつけるさいにも役立ちますね。

『生涯投資家』覚えておきたい言葉

言葉の深い理解は、的確な行動につながります。

ビジネスの現場は、「なんとなく意味の通じそうな言葉」であふれております。

『生涯投資家』を読み、頭に入れておきたいと感じた言葉を共有します。

上場

株式が広く一般に売買されるようになることであり、上場企業は情報を開示しないといけません。

経営者は、投資家の期待に応え続ける必要があり、思い通りに株主を選んだり、好き勝手に会社運営をすることが出来なくなります。

いわば私企業が「公器」になることです。

上場のメリット
①株式の流動性が上がり、株式が換金しやすくなること
②資金調達しやすくなること
※上記2点が必要無い場合は上場する必用もない

①株式の流動性が上がり、株式が換金しやすくなること
経営者が株式を100%持っていたら、上場したらそのまま株式の売却益を得られる。

ベンチャーキャピタルが出資している場合は、投資家が投資資金を回収できる。

ストックオプションによって、社員へインセンティブも提供できる。

自らの会社の評価を株価という数字で見られるので、経営に対するフィードバックが得られる。

②資金が調達しやすくなること
新しく株式を発行すれば、その株式を買う人から多くの資金を集められる。
※企業の資金調達方法
1直接金融:株式を新規発行することによる
2関節金融:銀行からの借り入れなど

上場のデメリット

①コストがかかる
IR(投資家向け広報)など部署が必用なのでその人材コスト、株主総会の開催コスト、監査のコストなど

②いつ誰が自社の株主になるかわからない

株式発行による直接金融で資金を調達する必用の無い企業は上場しなくても良い
また買収されたくない場合も同様。
MBO(マネジメントバイアウト=経営者が中心となり自社)による非上場かなどが手段

今勤めている会社は上場しています。

しかし、なぜ上場しているのか?などと考えたこともなかったです?

そして、どのような資金調達をしているのか?

を知るコトにより、社内で投資して貰いたい案件を上申していくストーリー作りに役立ちます。

同時に、誰が株主なのか?を理解し、有価証券報告書をもう一度読む機会になりました。

全社の戦略と自身の仕事の整合性

これをはかるのは、「有価証券報告書」がぴったりです。

役員との会話の準備

村上さんは、通産省の時代から上場企業の役員と対話する機会が多かったと言います。

そのとき意識されていたのが

「有価証券報告書」と「決算短信」を読み数字をインプットした

ということです。

売上収支だけでなく、資産の内容、売掛金と買掛金のバランス、有利子負債の額と比率、
利益剰余金(株主に還元しているのか?内部留保にしているのか?)

を最低限チェックします。

企業のBSは、その会社の現在までの軌跡と目指す資本政策を表します。

資本効率を考えた政策を行うことが、株主へのリターンの最大化に繋がる※経営者であっても、財務情報を的確に把握している人は少なかったと記載されていました。

これは、役員だけでなく「法人のお客さん」に会う場合は必須の行動ですね。

戦略を知るには、まず有価証券報告書を読む

このステップを徹底したいと思っています。

資本主義の原則

そもそも資本主義とは何なのか?

ということにも言及しています。

資本主義の意味と、会社の意味はつながっており、しっかりと理解しておくことが大事です。

企業が自らの事業計画を株主に説明して、株主はそれを吟味した上で経営者を選びます。
※会社法もこの事実を前提に定められています

村上氏がファンドを運営しはじめた当初、企業の経営方針は株主総会を通して株主が決めていくと法律にも定められているのに、実態は乖離していたと言います。

この事実がが、村上氏の
「コーポレートガバナンス」の浸透にむけた活動のきっかけとなります。

コーポレートガバナンス

村上氏の信念は、コーポレートガバナンスを日本に浸透させることです。

コーポレートガバナンスとは

投資先の企業で健全な経営が行われているか?
企業価値を上げる=株主価値の最大化を目指す経営がなされているか?監視するための仕組み

会社の重要な意思決定は株主総会を通じて株主が行い、株主から委託をうけた経営者が株主の利益を最大化するために経営をするという考え方が根底にあります。

そうすることで、健全な投資や企業の成長が担保できるし、株主がリターンを得て社会に再投資することにより、経済が循環していくメリットが得られるという仕組みになっています。

投資と3つの判断基準

そもそも投資とは何なのか?
ここにも明確な定義を与えています。

投資
利益を得る目的で、株式や事業、不動産などに資金を投入すること

村上氏は、投資を行う際に3つの判断基準を設けるようにしていると言います。

3つの投資判断基準

①期待値

割安に評価されていて、リスク度合いに対して高い利益が見込めるもの
投資案件について、分析研究を行い、独自の「期待値」を割り出す


100円を投資する場合

・0円になる可能性20%
・200円になる可能性80%

期待値=0×20+20×80=1.6

・0円になる可能性50%
・200円に鳴る可能性50%

期待値=1.0

・0円になる可能性80%
・200円になる可能性20%

期待値=0.4

期待値1.0を超えないと投資する意味がないと言います。

この「期待値を的確に判断」できることが投資家に重要な資質です。

0円になる可能性がある程度ある場合は投資しない人が多いのではないでしょうか。
確かに、0になるのはこわい、、、

そもそも人は、リスクが高い場合や、勝率が低い場合は投資を避ける傾向があると言います。

しかし、「期待値」と「勝率」は別の概念です。

自分なりの戦略を組み立てることで、勝率は変わらなくても、期待値を上げられます。

0円が5割を超えていても、3割が700円になるなら期待値は2.1

この「期待値」を的確に判断するには

・経営者の資質の見極め
・経験に基づく観

など、分析と研究を中心とした自分の頭で考え続けることと、何度も経験することが大事ですね。

現状に基づく期待値を導きだし、その期待値を少しでもあげるために外部要因や将来予測などを冷静に見極めながら戦略をたてる

ちなみに、村上氏が抽出した期待値

・宝くじは0.3
・カジノは0.9
・公営ギャンブルは0.7

いずれも1を下回るので、手をつけないようです。

②IRR内部収益率

内部収益率とは、「利回り」のことです。

15%以上が基準と言います。
※100円投資したら、1年後115円になっているイメージ

資金循環こそ将来のお金を生み出す原動力と言います。

なので、利回りの数値にこだわりすぎるというよりも、投資がその好循環のきっかけになるか?
という視点を判断材料にしているようです。

リスク

リスクの判断は、「定量」より「定性」を見たほうが掴みやすい

具体的には、経営者やビジネスパートナーの特性をつかむことです。

そのために、ディスカッションを通じて相互の考え方や経営方針を確認して

・どういう点で衝突がおこるか?
・最終局面で冷静な議論ができるか?

を見極めると言います。

この3つの判断軸は、自分の仕事に置き換えても非常に有効です。

とくに「期待値」を判断する視点は

・新規事業を立案する際の判断材料
・提案をする際の期待効果を明確に表せる
・論点の判断

などに取り入れていきたいと思っています。

まとめ

「投資家」の視点を持って日々の仕事を行うことが成果につながります。

リソースを、何のために使うのか?

とくに「期待値」の視点は非常に重要だと思ってます。

『生涯投資家』は、経営に関する本質だけでなく、数々の著名経営者との逸話や、
ひと昔前世間を賑わせた「ニッポン放送」をめぐるライブドア事件など、読み物として非常に面白いです。

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