本日のテーマはイノベーション研修です。
「イノベーションをテーマに、研修を組むように言われて困っている」
「そろそろ新人研修のネタを考えないといけない」
このような悩みはありませんか?
この記事では、
「イノベーションの重要性」をご説明しながら、
「イノベーションを起こすために必要な具体的STEP」をお話しします。
具体的なSTEPはそのまま研修にも使えます。
私は中小企業診断士として、マーケティングを中心に企業のコンサルティングを行ってきました。
「革新的な商品の開発」や「アイデアの創出」に多数携わってきた経験から、イノベーションを起こすために必要な要素とは何か?を、日々探っております。
その結果確立した方法論を、研修のプログラムとして構築。
実際に、何度か新人研修や社内研修でこのプログラムを活用した結果、参加者の意識変化/行動の変化といった確かなフィードバックを頂いてきた経験から、
イノベーションを起こし続ける企業の体質づくりからお手伝いできるのではと考え、この記事を執筆しております。
結論
「問い」をつくる習慣が、イノベーションの考えをつくります。
「問い」とは、「なぜだろう」「○○だからかな」と仮設をセットで考えることです。
習慣作りの具体的STEP:①問いの探索②問いの深堀③仮設の立案を踏む体験をすることが
イノベーション研修になります。
イノベーションとは「あたらしい常識」をつくること
イノベーションとは、「新機軸」や「革新」を意味し、新たな仕組みや習慣を取り入れて、革新的な価値を創造すること、を指します。
ここでは、生活者の視点にたち、「あたらしい常識をつくること」と定義をしたいと思います。
参考までに、「イノベーションの定義」と「イノベーションを起こすための考え方」として主要なものを下記記載をします。
シュンペーターの定義:「新結合」と5つの類型
経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、1912年に出版した著書『経済発展の理論』の中で、
「新結合」という言葉を用いてイノベーションを解説しました。
そのなかで、イノベーションを5つの類型にわけて説明をしています。
1.新しい財貨(プロダクト・イノベーション)
従来とは異なる、革新的な新商品(新製品・新サービス)を開発すること。
2.新しい生産方法(プロセス・イノベーション)
新たな生産方法や、流通方法を導入すること。
3.新しい販路(マーケット・イノベーション)
新たな市場に参入し、新規の顧客、ニーズを開拓すること。
4.新しい供給源(サプライチェーン・イノベーション)
商品をつくる原材料や、供給ルートを新規開拓すること。
5.新しい組織(オーガニゼーション・イノベーション)
組織を変革することで、業界に大きな影響を与えること。
経済産業省の定義
経済産業省は2019年にイノベーションの定義を発表しました
その中でイノベーションとは、
研究開発活動にとどまらず、
- 社会・顧客の課題解決につながる革新的な手法(技術・アイデア)で
新たな価値(製品・サービス)を創造し - 社会・顧客への普及・浸透を通じて
- ビジネス上の対価(キャッシュ)を獲得する一連の活動を「イノベーション」と呼ぶ
と解説しました。
ドラッガー:イノベーションの7つの種
マネジメントの祖と呼ばれるピーター・F・ドラッカーは、
イノベーションを創出するための「7つの種」を解説しています。
上から順に、成功しやすい順に並べられています。
1.予期せぬもの
2.ギャップ
3.ニーズ
4.産業構造の変化
5.人口構造の変化
6.意識の変化
7.発明発見
クリステンセン:イノベーションのジレンマ
ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンは、
イノベーション研究の第一人者として有名です。
著書『イノベーションのジレンマ』の中で、2タイプのイノベーションについて解説しています。
1:持続的イノベーション
「持続的技術革新は、主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標にしたがって、既存製品の性能を向上させるもの」
持続的イノベーションとは、既存の製品やサービスの改善を積み重ね、
性能を向上させる手法としています。
2:破壊的イノベーション
「破壊的技術は、従来とはまったく異なる価値基準を市場にもたらす」
破壊的イノベーションは、持続的イノベーションとは全く異なる発想から生まれるものです。
新しい製品やサービスが市場に生み出された結果、既存の事業を破壊させる場合もあることから、
破壊的とされています。
イノベーションのジレンマとは、
大企業が、既存商品の改善(持続的イノベーション)に捕らわれてしまい、
破壊的イノベーションを起こせないことをいいます。
ヘンリー・チェスブロウ:オープンイノベーション
オープン・イノベーションとは、経営学者、ヘンリー・チェスブロウによって2003年に提唱された概念です。
著書『オープンイノベーション』の中で、イノベーションには2つのタイプがあると解説しています。
1:クローズド・イノベーション
クローズド・イノベーションは「組織や製品開発において、すべて自社の資源で内省化する考え方」と定義されています。
しかし、技術や人材を全て自社で調達して新製品を市場に出すまでには、一定の期間が必要になります。
近年、新製品が世の中に出るスピードが速くなり、製品ライフサイクルは短くなりました。
同氏は企業が持続的に成長していくには、クローズド・イノベーションだけでは限界があるとしています。
2:オープン・イノベーション
オープン・イノベーションは「組織の改革を促進するために、意図的に外部のアイデアや資源を取り入れることで、
新たな価値を創造すること」と定義されています。
自社のリソースだけで完結するよりも、外部のリソースをうまく活用しながら
スピードをもって市場に新製品を投入できるオープン・イノベーションこそ重要だとしています。
具体的には、研究機関や企業と協働することで、外部のアイデアや知識、技術などを自社の製品やサービス開発に活用することなどがあります。
会社の機能や社会の成り立ち、人間の心理の視点など、
多様なアプローチでイノベーションについて考え方が研究されてきました。
ただ共通していえることは、「新しい視点」を得るため工夫をしている
ということではないでしょうか?
なぜ新しい視点が必要なのか?
その視点から「新しい常識」が生まれるからです。
なぜイノベーションが必要なのか?
イノベーションとは「あたらしい常識」だと定義させて頂きました。
ではなぜ、イノベーションが大切なのか?
それは日本経済の成熟度の高さにあります。
現在、物と情報があふれていて、細かいニーズにまで対応する商品サービスが数多くでています。
すなわち、これから事業活動を続けていくためには、既存のニーズのなかで細かく差別化するだけでは
難しく、「あたらしい常識を創造する」ことが必要となります。
あたらしい常識の近年の事例として
スマートフォンがあります。
15年前にスマートフォンはありませんでしたが、
現在では、スマートフォン無しでの生活は考えにくいです。
「手のひらの上で情報すべてにアクセスできる」という価値は、
現代のまさに「あたらしい常識」となりました。
イノベーションのつくり方
イノベーション=あたしい常識は、「問い」をつくることがはじまりです。
「問い」とは、「なぜだろう」「○○だからかな」と考えることです。
「あたしい常識」とは、「いまの常識」を疑うことからはじまります。
イノベーションにつながる「問い」をつくる3STEP
イノベーションにつながる問いをつくるためには、具体的に3つのSTEPを踏みます。
STEP1:問いの探索 STEP2:問いの深堀 STEP3:仮設の立案
それでは、各STEPの内容を見ていきたいと思います。
STEP1:問いの探索
世の中の事象や、生活状況から、
[なぜだろう?]を集めます。
これを「問いの種」と呼びます。
ふと疑問に思ったことや、不満に思ったこと、
願望を感じたコトなど、ささいなことでも良いので
書き留めます。
スマホの例
疑問:「なぜ、インターネットは家の中でしかつながらないのだろう」
願望:「外でもPCとおなじくらいの情報にアクセスしたいなぁ」
STEP2:問いの深堀
STEP1:問いの探索にて集めた「問いの種」について深く考えてます。
「なぜ疑問に思ったのか?」
「なぜ願望を抱いたのか?」
深堀の時に、思考に役立つ5つの型を紹介します。
※問いのデザインという書籍にて紹介されていた考え方です。
①素朴思考
素朴に向き合い、問題を掘り下げていく方法です。
「わからない」ことをベースに、思考を深めていきます。
②天邪鬼思考
素朴思考とは裏腹に、目の前の事象を批判的に疑い、ある意味「ひねくれた視点」から
物事を捉える思考法です。
③道具思考
知識や記号、ルールと言った概念的なルールを活用する方法です。
④構造化志向
ものごとを構成する要素を俯瞰し、構成要素同士の関係性について分析・整理し、
構造的に捉える考え方のことです。
④哲学思考
さまざまな物事の本質をとらえる思考法です。
スマホの例
疑問:「そもそも、インターネットは有線でつながっていないと繋がらないものなの?」(素朴思考)
願望:「そもそもなぜ、いつでも情報が見たいと思うのだろう」(哲学思考)
STEP3:仮設思考
STEP2にて深堀を行った問いに対して、
「○○だからかも」「□□をすればいいかもしれない」
という自分なりの解を仮設として設定します。
ここでは、今できることから考えずに、
自分が着目してきた問いにどうしたら応えられるか?という視点で考えることがポイントです。
以上、
STEP1からSTEP3で行うことは、「いまの常識」を、問い直すことです。
「いまの常識」を問い直すことは、
イノベーション=新しい常識をつくるための行動になります。
イノベーション研修は、今まで説明をしてきた
問いをつくる3つのSTEPを体験するプログラムになります。
このプログラムを実施することにより、いまの常識を問い直す習慣が出来ます。
そのことが、後のイノベーションへとつながっていきます。
イノベーション研修プログラム
目的
「イノベーション=あたらしい常識」を創造するための
「問い」を自ら習慣的にたてる社員の育成
研修プログラム
STEP0:オリエンテーション 個人TASK:問いの探索シート STEP1:問いの探索 個人TASK:問いの深堀シート STEP2:問いの深堀 個人TASK:仮設シート STEP3:仮設の立案 最終発表
それぞれ、個人のTASKとして、各STEPのディスカッションの元となる
シートを制作してきてもらいます。
※シートは後述します
ディスカッションは最大でも4人が1グループとなり行います。
それぞれが「個人TASK」として製作してきたシートをベースにディスカッションをしていきます。
ディスカッションをするときのポイントとして、
いきなり頭ごなしに「否定をしない」ということがあります。
自分と意見が違ったとしても、根拠がまだ薄かったとしても、
一旦受け入れて、そのなかで、自分の考えを伝えていく。
この姿勢は大前提として、参加者に伝えておきます。
進行役がファシリテーターとなり、各グループを巡回して全体をマネジメントしていきます。
※理想としては、各チームに1人、研修の運営チームからそれぞれファシリテーターをたてることをおすすめします。
研修のクライマックスは、最終発表になります。
役員や上司など、研修のオーナーにむけて、それぞれが考えた
新しい常識について発表をしていきます。
そしてこのイノベーション研修は、研修で終わりではなく。
それぞれ個人が考えた仮設を実務に持ち帰り、実現の可能性を探り続けます。
参加者全員が、「問い」「仮設」を持ちながら普段の仕事に取り組むので、
既存業務が持つ要素とも掛け合わさり
まさに「新結合」を期待することができます。
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