今は、モノより体験を買う時代といわれています。
「コト消費」という言葉も一般に定着したのではないでしょうか。
本日は、これから商品・サービスをつくっていく上で必須の考えになる
「嬉しい体験価値」のつくり方について、記載をしていきたいと思います。
この嬉しい体験は、UX[UserExperience]と呼ばれています
この記事は、普段商品やサービスづくりに関わる方の
「人を惹きつけるサービスは、どうつくるのだろう?」
「体験価値の設計って具体的にどうのようにやるのだろう?」
「UXってよく聞くけど、仕事にどう活かせばいいのかわからない」
という疑問にお答えする内容になっています。
私自身マーケティングに10年以上携わっています。
中小企業診断士として、多くのブランディングや商品企画テーマに携わる中で、
UXというキーワードは必ず使用しています。
嬉しい体験価値をベースに、商品/サービスを創造するという考えは、
最近のトレンドではなく、今までも、そしてこれからも、中心となる考えです。
なぜならば、商品サービスを経て獲得する「嬉しい体験」こそが
生活者が買う理由・使い続ける理由だからです。
ではUX=嬉しい体験価値をつくるにはどうすれば良いのか?
結論から記載します。
①生活者の期待を理解する
②生活者の期待を超える価値を考える
では、以下具体的に見ていきたいと思います。
①UXとはなにか?
UX(UserExperienxe)を一言で定義をすると、「嬉しい体験価値」です。
嬉しい体験価値とは、
実際に商品やサービスを実体験する過程で得られるコトが、期待を超えていると
実感することです。
もともと、Webサービスやアプリケーションの開発時に使われていた言葉で、
今でも、デジタル周りの専門用語だと思われている側面もあります。
しかし、UXの考えは、商品サービスすべてに関係してきます。
実際、食品やお菓子、日用品の新商品企画PJでも活用をしています。
UXとUIの違い
UXを語るときに、よく混合して出てくる言葉にUIという言葉があります。
UI(UserInterface)を一言で定義すると、「商品サービスとの接点」です。
こちらも、Webサービスやアプリケーション開発の文脈で語られることが多く
WEBのデザインや操作性と共に検討されます。
もちろんUIもデジタルに限った話ではなく、テレビのリモコンなど身近に触れる商品サービス
全てにその考え方は当てはまります。
「UX=嬉しい体験価値」と「UI=商品サービスとの接点」の違いは、
「期待」の捉え方です。
UIの目的=「期待通り」
UXの目的=「期待を超える」こと
UIとUXは、完全に分けて考えるというよりも、
UXがUIを内包している、そんなイメージかと思います。
事例
UXの事例をいくつかみていきたいと思います。
■iphone
一番有名なのがIphneです。
「説明書がなくても誰でも楽しく使う」ことが出来ます。
従来の携帯電話にあった
通信手段としての期待を、
「情報を手のひらに集約できる」
「自分の好みに、コンテンツをカスタムできる」
という体験価値が完全に越えています。
■ディスニーランド
「遊園地」
この言葉を見て、頭の中にどのようなイメージが沸くでしょうか?
では次に、
「ディズニーランド」
同じくこの言葉を見て、頭の中にどのようなイメージが沸くでしょうか?
「遊園地」から沸くイメージとしては、
メリーゴーランドやジェットコースター、ポップコーンなどの
いわば商品そのものが静止画として、思い浮かぶのではないでしょうか?
一方、「ディスニーランド」からは、
パークにいるキャラクターと触れ合うイメージ、アトラクションを待っている時、歩きながらポップコーンを食べている姿
など、ご自身が体験してきたことが、「動画」としてイメージできるのではないでしょうか?
まさに、「動画として思い出せる体験」こそ、UXになります。
UXのつくりかた
では、実際にどのようにUXを設計していくのか?を考えていきます。
「嬉しい体験」は、あくまで生活者が感じるものです。
なので、もちろん完全にはコントロールをすることができません。
さらに、一回商品サービスを作ったらおしまい、というわけでもありません。
UXは実際に体験してくれる生活者とともに作り上げていくという前提のもと
どのように「設計」をするのか?をみていきたいと思います。
この手法は、今まで商品サービスの開発PJやコミュニケーション開発PJを通して
独自に蓄積してきた手法です。
どのような業界カテゴリにおいても、汎用性が高く活用できると考えています。
【UXのつくり方】 ①生活者の期待を理解する ・期待マッピング ・期待ジャーニーマップ ②生活者の期待を越える価値を考える ・UXジャーニーマップ
①生活者の期待を理解する
UX=嬉しい体験価値を実現するには、生活者が抱く「期待」を超える必要があります。
そのために、まずは想定の商品サービスカテゴリにおける「期待」の理解を行います。
具体的なやり方として、
商品サービスにおける、期待の関係性を捉える「期待マッピング」
商品サービスを体験する全体像から、各プロセスにおける期待を把握する「期待ジャーニーマップ」があります。
期待マッピング
商品サービスに対して、期待することを言語化していきます。
そのときに、「○○をしてくれる」「○○な状態になれる」
と、「直接的に得られること」と「体験を通した結果得られること」の視点で
抽出をしていきます。
たとえば、コーヒーだと、
直接的:芳醇な香りと深いコクを味わうことができる
結果:ゆったりとリラックスをした気持ちになれる
といったイメージです。
「直接的に得られること=機能的」
「体験を通した結果得られること=情緒的」
と言い換えることが出来ます。
冒頭に紹介した「コト消費」という言葉は、
まさに情緒面に着目した考え方です。
「直接的に得られること=機能的」と「体験を通した結果得られること=情緒的」は
因果関係で結ぶことができます。
矢印などで結ぶことにより、期待の関係性を見える化していきます。
例:コーヒー
直接的:芳醇な香りと深いコクを味わうことができる
↓
結果:ゆったりとリラックスをした気持ちになれる
※ひとつの矢印だけでなく、何本にも派生していきます。
例えば、「芳醇な香りと深いコクを味わうことができる」
からは、「ゆったりとリラックスをした気持ちになれる」という結果以外にも
「気持ちの切り替えにもなる」や「すっきりと目覚めることが出来る」などにもつながっています。
期待ジャーニーマップ
実在する商品サービス[新商品開発ならば、競合となりえる商品サービス/リニューアルのテーマであれば現在の商品]
を体験するすべてのプロセスにおいて、期待と現実を記載します。
プロセスは、業界のカテゴリごとに異なります。
実際の例として食品や菓子、日用品では
[買う]→[しまう]→[使う]→[捨てる]
というプロセスを活用しました。
コーヒーの場合
[買う] 期待:コーヒーを飲みながらリラックスしたい/○○の時に飲もう
[しまう] 期待:風味が損なわれなければいいな
[使う] 期待:美味しいコーヒーを淹れてゆっくりとリラックスしたい
[捨てる] 期待:あまりゴミが出ないと良いな
プロセスにわけることで、
実際の商品サービスを体験するさいの期待の解像度を上げていきます。
「嬉しい体験」は、積み重なった記憶が蓄積されていきます。
その今まで積み重ねてきた記憶は、「期待マッピング」で関係性を整理した期待のキーワードとなり
出てきます。
以上、生活者の期待を理解するために
「期待マッピング」をつかい、業界カテゴリの期待の全体感として、
「直接的に得られること=機能的」と「体験を通した結果得られること=情緒的」の関係性を理解。
「期待ジャーニーマップ」で、具体的な商品のプロセスごとの期待を洗い出すことにより、
より解像度を上げて理解をはかります。
②生活者の期待を越える価値を考える
期待マッピングと期待ジャーニーマップで理解をした、
「現在の期待」を土台に、期待を越えるための設計を行っていきます。
期待の設計図として、「UXカスタマージャーニーマップ」というツールを使います。
UXジャーニーマップ
どのような体験が出来たら、期待を超えられるか?を考えるためのツールです。
①生活者の期待を理解するSTEPで使用した
「期待ジャーニーマップ」をベースに考えていきます。
上記には、現在の期待が掛かれています。
コーヒーの場合
[買う] 期待:コーヒーを飲みながらリラックスしたい/○○の時に飲もう
[しまう] 期待:風味が損なわれなければいいな
[使う] 期待:美味しいコーヒーを淹れてゆっくりとリラックスしたい
[捨てる] 期待:あまりゴミが出ないと良いな
そこに、どのような体験が付加されたら期待を超えるか?そのアイデアを考えていきます。
例えば、コーヒーの場合だと
[買う] 期待:コーヒーを飲みながらリラックスしたい/○○の時に飲もう
→ 一番美味しい飲み方が視覚でわかり、買うときから「香り」でリラックスすることができる
[しまう] 期待:風味が損なわれなければいいな
→ 保存をしながら風味が良くなる、熟成される
[使う] 期待:美味しいコーヒーを淹れてゆっくりとリラックスしたい
→ ゆっくりとリラックスながら飲む習慣が続くと、健康的な体になれる
[捨てる] 期待:あまりゴミが出ないと良いな
→ 回収システムが構築されているから、そもそもゴミが出ない
といったアイデアが考えられます。
このアイデアが、UX=嬉しい体験になります。
UXを設定したら、実現するための施策を考えていきます。
かならずしも、新しい商品を開発したり、新しい技術を開発したりせずとも、
コミュニケーションの「視点」を変えることで、実現できるものもあります。」
[買う] 一番美味しい飲み方が視覚でわかり、買うときから「香り」でリラックスすることができる
→生活者との接点で動画を視聴できるようにする / 香りを感じられる店舗設計を行う
[しまう] 保存をしながら風味が良くなる、熟成される
→パッケージに、風味を向上させる機能を付ける
[使う] ゆっくりとリラックスながら飲む習慣が続くと、健康的な体になれる
→コーヒーの健康面の効果を打ち出したコミュニケーションを設計する
[捨てる] 回収システムが構築されているから、そもそもゴミが出ない
→パッケージ回収システムを自治体とも協力しながら構築する
といったイメージです。
具体的な施策の案が出ると、「すぐに実現できること」「時間をかけて実現させること」と
時間軸で実施のTASKを整理することができます。
(例:コーヒーの事例だと「コーヒーの健康面の効果を打ち出したコミュニケーションを設計する」ことは、比較的すぐに実現できること
「パッケージ回収システムを自治体とも協力しながら構築する」ことは、時間をかけて実現することに当てはまります。
「すぐに実現できること」から着手をしていき、UXを積み重ねます。
③UXをマネジメントする
UX=嬉しい体験価値は設計しただけでは不十分です。
実際に体験を生活者との相互関係によって成り立ちます。
なので、設計をしたUXは、実際としてどう体験されているのか?どういったイメージを抱かれているのか?
を確認する必要があります。
設計→実施→確認→対応のサイクルを回しながら、UXをマネジメントしていきます。
「実体験」と「期待」を定期的に把握する
UXジャーニーマップで設計したUXを実際に体験してもらっているのか?
その結果期待はどのように変化したか?を調査します。
こちらは、生活者1人1人に深くインタビューをする定性調査であるデプスインタビューという手法を使います。
UXジャーニーマップを用意して、該当商品サービスのプロセスごとに「実体験」と「期待すること」をヒアリングしていきます。
「期待」に関しては、なぜ?という理由の部分も含めて深ぼっていきます。
UXジャーニーマップで設計した「期待を超える体験」と「実体験」のズレ。 UX施策を実施し、生活者が実際に体験したあとの「期待」の変化。
上記2点を定期的に把握します。
■実体験の「ズレ」と「期待の変化」に対応する
「実体験のズレ」と「期待の変化」を把握したら、原因を考え、即座に対応策を考えていきます。
「実体験のズレ」が生じている場合は、「適切に使われていない」と「施策が機能していない」という原因が考えられます。
対応策としては、
「適切に使われていない」=コミュニケーションの見直し
「施策が機能していない」=機能の見直し
といったことが考えられます。
「期待の変化」に対する捉え方としては、
「期待が変化していない」「期待が下がった」状態であれば、実体験のズレが生じている場合が高いです。
ズレに対する対応策をとります。
「期待が上がった」状態であれば、実体験を通して価値を感じてもらっている場合が多いです。
ここで気をつけなければいけないことは、期待が上がっている状態を放置すると
当然「期待を超えた体験」ができていないことになります。
なので、施策がうまくいっている場合でも、常にブラッシュアップは必要になってきます。
今回はデプスインタビューという手法を取り上げましたが、このような調査は準備(会場の予約/協力してくれる人を集めるなど)
に時間がかかります。
特に、アプリなどのデジタルサービスですと、その場でユーザーからフィードバックをもらえる仕組みになっていることがほとんどです。
設計→実施→確認→対応のサイクルは早く多く回すことがポイントとなります。
食品やお菓子などの商品も、デジタルサービスとの連携をはかり
サイクルを早く回すことも必要となってきます。
※流通を通さず、生活者と直接やりとりをするD2C(Direct to Consumaer)はその概念が使われています
まとめ
■コト消費がもとめられる時代、UXの考え方はビジネスを行う上で必須
■UX=嬉しい体験価値
■UXのつくりかた
①生活者の期待を理解する
②生活者の期待を越える価値を考える
■①生活者の期待を理解する
・期待マッピング:業界カテゴリの期待の全体感をとらえる
・期待ジャーニーマップ:具体的な商品のプロセスごとの期待を洗い出すことにより、
より解像度を上げて理解
■②生活者の期待を越える価値を考える
・UXジャーニーマップ:どのような体験が付加されたら期待を超えるか?そのアイデアと施策を考える
■UX=嬉しい体験価値は設計しただけでは不十分。
実際に体験を生活者との相互関係によって成り立つ
設計→実施→確認→対応のサイクルを回しながら、UXをマネジメント
■UXマネジメント
「実体験」と「期待」を定期的に把握する
「実体験のズレ」と「期待の変化」に対応する
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