古典から、生きるヒントを得たいけれど難しくてよみにくそう
そんな悩みにお答えします。
確かに哲学書は、生きるヒントが沢山ありそうです。
しかし、なによりとっつき憎い。
図解などはほぼされず、難解な言い回しで言葉の意味を理解するだけでかなりの労力を使うイメージですよね。
それを、現代の言葉で、図解も使いながらわかりやすく解説してくれるのが、
100分de名著シリーズです。
今回、アリストテレスの二コマコス倫理学を取り上げたテキストに、日々を生きるヒントがたくさん散りばめられていたので紹介したいと思います。
NHKの100分de名著『アリストテレス 二コマコス倫理学』にみる、毎日のヒント
人間の行為にはすべて目的があり、最終目的が幸福である
アリストテレスは人間の行為や存在の究極目的は幸福にあると言います。
手段(行動)と目的がつながっているイメージですね。
そして、最終的な目的がないと構造が際限のないものとなってしまうことからも、幸福を着地点に据えています。
例えば、「大学に入ること」は受験勉強の目的になります。
しかし、「専門的な知識や技術をつけること」という目的にとっては手段になります。
「大学に入ること」は目的にも手段にもなります。
「幸福になること」は、目的にはなるが手段にはなりません。
となると、最終の目的である幸福まであには、かなりの距離感がある印象を受けます。
ポイントは、幸福ははるか遠くで実現するものではなく、その過程においても幸福を感じる
というところです。
先ほどの例をとると、「受験勉強」をする過程においても、物事を知ることができるという喜びを感じます。
これは、実感するところがあます。
中小企業診断士の勉強してるとき、目的はもちろん合格だったのですが、勉強をとおして知識が増え、それを実践でも試すことで喜びを感じるところがありました。
手段の目的化
はどちらかというと悪い意味で使われることが多いですが、手段の過程にも喜びを感じるという側面からみるとまた違った見方になります。
毎日の行動ひとうひとつの意味を考えると、充実感が変わってきますね。
3つの善
アリストテレスは
人間の行為は、善をめざしているという表現をしています。
善とは良いこと、「価値」とも言い換えられますね。
「3つの善」
①道徳的善:道徳的に良い
困っている人を助けることは良いこと、社会のルールを守ることは良いこと
②有用的善:役に立つ
お金があれば必要なものを買えるから、「お金は良い」という言い方をする
③快楽的善:快楽を与えてくれる
楽しいという意味での良いこと
善が日々の行動の目的になっている。
というか行動のほとんどが、このどれかに当てはまります。
すごい整理の仕方だと思いました。
哲学書は、内容のインプットというよりも、このような著者の思考プロセスを体感することにも醍醐味がありますね。
3つの生活類型
また、我々の生活においても3つの類型があると説明されております。
①快楽的生活:
少しでも多く快楽を味わうことこそが幸福な人生だと考えること。
②社会的生活:
社会における自己実現を幸せだと考えること。
③観想的生活:
この世界のありさまを、ありのままに見て取る。心理を認識することこそが幸福だと考えること。
アリストテレスは、人間が生まれながらに持っている可能性を花開かせて現実かする、そのことによって生まれてくる充実したあり方こそ幸福であるという考え方をもっていました。
人間が持っている能力・可能性で最も優れたものは「理性」だと言います。
単に衣食住を確保するためといった実用的な目的では無く、世の中のことがらをありのままに眺め、その真相を見て取ることにおいて、真に人間らしい仕方で「理性」という能力が花開いていくと言います。
4つの徳
人間が生まれながらに持っている可能性が実現すると、より充実した日々をおくれるようになる
それを可能にするのが「徳」という考え方です。
徳は身につけるものというイメージでしたが、それよりは内にみなぎっている力を引き出すというイメージのほうが本来の意味のようです。
アリストテレスは、徳のなかでも極めて重要なものが4つあると言います。
①賢慮:判断力
②勇気:困難に立ち向かう力
③節制:欲望をコントロールする力
④正義:他者や共同体を重んじる力
①賢慮:判断力
倫理学とは「たいていの場合そうであるところのもの」を扱う学問です。
数学のように「常にそうであるもの」を扱うわけではありません。
なので、常に自分が直面している状況を知り、的確に判断することが大事になってきます。
個別具体的な状況を的確に見て取り、適切な選択を下していく力のことです。
②勇気:困難に立ち向かう力
人生の様々な局面において、困難に直面します。
その困難に立ち向かう力こそが、勇気です。
③節制:欲望をコントロールする力
日常には、数多くの誘惑があります。
その誘惑に負けずに、自分自身を律することが大事になります。
④正義:他者や共同体を重んじる力
人間は余裕がなくなると、自分のことしか考えなくなります。
そうならずに、他者と共同体を重んじ、そのルールを守ることができる力こそ、正義という徳になります。
中庸という考え方
アリストテレスは「徳のあり方」を、両極端にある悪徳の中庸だと言います。
「不足」だけでなく、「過剰」も悪徳になります。
例えば勇気という徳については、「不足」している意味合いの臆病だけでなく、「過剰」の意味合いである「向こう見ず」も悪徳になります。
節制でいうと、「不足」は放埒、「過剰」は無感覚になります。
ほどほどにではなく、「ど真ん中」を射貫くようなイメージが徳のある行為だと言っています。
まとめ
倫理学は「たいていの場合」にあてはまる事柄のことです。
お金持ちが良いとは限らない
勇気があることが良いとはかぎらない
けれどたいていの場合良いというスタンスを取る
これが、融通が利きとても腹落ちする
と同時に、自分で判断する力が大事になります。
4つの徳の「賢慮」ですね。
とくに4つの徳は意識しながら、日々を充実させていきたいです。
①賢慮:判断力
②勇気:困難に立ち向かう力
③節制:欲望をコントロールする力
④正義:他者や共同体を重んじる力
コメント