人の「日記」って、ダメだとはわかっていても覗いてみたくなりますよね?
作家たちは、日記も作品として公開しています。
そんな「日記文学のおすすめ」を紹介したいと思います。
私自身、読書が好きで年間100冊くらい読んでいるのですが「日記文学」も大好きなジャンルです。
文章も平易でわかりやすく、いつも難しいことを書いている作家も、日記だとおもしろく読めます。
読書にちょっと苦手意識のある方にもおすすめ出来ますね。
今回は7冊を厳選しました。
日記文学おすすめ7選
『一私小説書きの日乗』 西村賢太
私小説家西村賢太の日記シリーズです。
小説でも、私生活のネタを題材にしている私小説家が書く日記は、抜群におもしろいです。
シリーズは全てで〇冊出ており、芥川賞を受賞した時期から始まっています。
・TVに出ていた時期
・TVからほぼ身を引き「小説」と師匠と仰ぐ私小説家の「藤澤清造の研究」に邁進した晩年
・小説が書けない時期
全てを赤裸々に表現されています。
どんな時でも、基本のルーティーンのようなリズムは崩しません。
昼過ぎにおきて、サウナで身を清め、夜から明け方にかけて執筆をする。
執筆を終えると、自作の肴で晩酌をはじめる。
創作とルーティーンの強いつながりを感じます。
『池波正太郎の銀座日記』 池波正太郎
鬼平犯科帳など、数多くの名作を生み出している池波正太郎の日記です。
・万年筆と原稿用紙に小説を書く
・映画の試写に出かける
・銀座でおいしいものを食べる
・家でもこだわりの食材でおいしいものを食べる
・追い掛けるように仕事する
・時に山の上ホテルにこもり、絵を描いたり、文学賞の選考作品を読む
・読書をする
生活からにじみ出る、美学を感じ取ることができます。
特に、食を大切にする姿勢。
目の前の一食を大切にしようと思える本です。
『へらへらぼっちゃん』 町田康
エッセイの中に日記も収録されています。
町田康さんは日本における、パンクロックの始祖であり、現在も音楽活動を続けています。
いままで、見たことがないような文体で、小説を読んで初めて声を出して笑いました。
そんな町田さんが書く日記も、おもしろいです。
朝起きて、午前中の時代劇の再放送をみる。
昼を食べたあとに、時代劇の再放送をみる。
夜、晩酌をしながら、時代劇の再放送をみる。
そんな脱力系の日々が淡々と記録されています。
『小説家の休暇』三島由紀夫
文豪、三島由紀夫の日記です。
日記においても、流麗な文章で身が清められるような感覚になります。
「素晴らしい快晴」
という表現が非常に清々しくて良いなと思い、密かに使っています。
小説家は、自分の頭の中を言語化する職業だということがよくわかります。
日記は、フォームをつくるルーティーンにもなるのかなと思いました。
『古川ロッパの昭和日記』古川ろっぱ
昭和の大喜劇人、古川ロッパの日記です。
まず驚くのは、元日から大晦日まで一日も休んでいないこと。
そして、毎日午前と午後の2回舞台に出ていること。
そのうえ、しっかり遊んでいるいること。
このエネルギーに愕然としながら、細かい愚痴が数多くかかれていておもしろです。
また、戦争が近づく中でも、驚くほど普通の日常をすごしている。
昭和初期の生活が、どんな生活だったのか?を垣間見ることもできます。
『藝人春秋Diary』 水道橋博士
水道橋博士が書くノンフィクションは読むと夢中になります。
日記がルーティーンになっているらしく、日本で一番はじめにブログをはじめた芸能人らしいです。
細かく日々が記載されていて、読んでいて面白い。
『ウィトゲンシュタイン 哲学宗教日記』
「論理哲学論考」という哲学史に残る名著を記した、ヴィトゲンシュタイン。
けれど、難解で、正直何を言っているのかわからないところだらけです。
日記においても、自らの思考が記されています。
が、哲学書の形をとるよりも、日常の気づきベースでかかれた日記は理解ができます。
ヴィトゲンシュタイン入門としても良いのでは、と思っています。
日記文学の良いところ
生活を垣間見るおもしろさ
人の生活を垣間見るのはおもしろいです。
情熱大陸やプロフェッショナル仕事の流儀などのドキュメンタリーが人気なのも、生の生活現場が見れるという側面もある気がします。
日記文学は、どんな生活をしているのか?を読むことができます。
歴史上の凄い人でも、案外普通の生活をしています。
思考を垣間見るおもしろさ
気づきや悩みなど、著者の思考を垣間見ることができます。
日常のちょっとした出来事から、鋭い考察をしたり
見逃してしまうような些細な要素から、深みのある見解をしめしたり
さすがと思うことがある反面
書けない苦しみや、やらないことから逃げている思考など、人間らしい側面もみることができます。
誰もが悩み、苦しみ、モヤモヤを感じていることがわかります。
入門書として
著者の作品が難解で、とっつきにくかったとしても、日記なら読めます。
読んでみたかったけど、なかなか読めない本があったらその著者の日記を読んでみると良いかもです。
とにかく読みやすい
一日一日、短い文章で綴られているので、ちょっとした隙間時間や読書が苦手な方でも手に取りやすいです。
レンジでモノを温めているとき、カップ麺が出来上がるのを待っているとき、読んでます。
自分でも日記を書いてみる
日記文学を読むと、自分でも日記が書きたくなります。
自分も、日記文学と出会ってから、20年近く毎日日記を書いています。
良いことも、嫌なことも、書き出すと不思議と客観視できます。
すると、体の中のモヤモヤのようなモノが取り除かれていくのがわかります。
一日の最後に日記を書くことと、体の中が浄化されるような感覚になれます。
自分の頭の中を「言語化」する習慣にもなりますね。
アイデアが出たり、有意義なディスカッションにつながったり、仕事においてもプラスに作用します。
なにより、3年前の今日は何してたかな?とか簡単に振り返ることが出来るのが楽しいです。
まとめ
日記文学は、最も手軽に読める文学作品です。
作品を創造している作家たちの、思考の断片、日常のルーティーンが読みやすい文章で表現されているからです。
純文学の文豪、今も名が残る哲学者、読みたいけれど読み解けなかった著者も日記ならおもしろく読めます。
読書を楽しむ入り口として、日記文学を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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