・マーケティングリサーチを勉強したい
・おすすめの本を知りたい
そんな疑問にお答えする、
実務で役立ったマーケティングリサーチ本を紹介します。
私は中小企業診断士として活動しながら、10年以上製造業でマーケティングを行っております。
マーケティングにおいて、リサーチは基本です。
しかし、事務においてはなかなか体系的に学ぶ機会が少ないことも事実です。
そこで、実務で役立つことはもちろん、理論的な知識の形成にも役だった書籍を7冊ご紹介します。
マーケティングリサーチおすすめ本
リサーチの全体像を掴む
まずは、リサーチ業務の全体像をつかむのに有効な書籍を紹介します。
①『外資系コンサルのリサーチ技法』
アクセンチュアのコンサルタントグループが書いたリサーチの基本書です。
まさに、調べる技術の教科書といえます。
リサーチは、4つのステップで進めていきます。
①目的の確認
②リサーチプランの設計
③リサーチの実行
④アウトプット化
このステップを意識することが非常に大事です。
特に①目的を曖昧なまま進めてしまっている事例を今まで何件も見てきました。
下記の視点で、まず目的の確認を行うことを徹底するだけで、成果が違ってきます。
【目的の確認】
①答えるべき問い
②企画のステージ
③成果のレベルとまとめるイメージ
①答えるべき問い
「何を知りたいか?」を考える前に、「そもそも、どんな課題を解決したいのか?」という「答えるべき問い」をはっきりさせます。
例えば上司に、「米国の食品市場について調べて」という指示が出たときに、いきなり調べるのではなく、「米国の食品市場を知ることで、どんな課題を解決したいのか」「どんなアクションに結びつけたいのか?」ということをはっきりさせル必要があります。
・食品事業に乗り出したい
・材料の取引先を見つけたい
など問いにより内容が大きく変わります。
最初の段階で、問いを絞り込むことが、ポイントです。
②企画のステージ
企画がどのステージにあるかによってもリサーチの内容は大きく変わってきます。
下記3つのステージのどこにあるか?によってリサーチの内容が大きく変わります。
1:検討着手ステージ
2:仮説立案ステージ
3:仮説検証ステージ
1:検討着手ステージ
「基礎を理解し全体観を把握する」ためのリサーチです。
以降の本格的なリサーチで得られるはずの情報を正しく解釈するための基礎知識を備えることが目的です。
業界本や企業ホームページ、有価証券報告書といったすぐ取得できる情報をざっと眺める胃マージです。
2:仮説立案ステージ
「企画の方向性を決める」段階でのリサーチです。
検討着手ステージより、一段深いリサーチが必要です。
表面的な情報でおわらせず、自社と他者を比較して数値の高低を見るなど、工夫を入れていきます。
深く知りたいことにピンポイントで答えてくれる情報は稀で、ほとんどは間接的、部分的な情報です。
自分なりの仮説をもち、その仮説が正しいか?という視点で情報を見ていく必要があります
3:仮説検証ステージ
「言いたいことに根拠を与える」ためのリサーチです。
仮説を100%証明してくれる情報はありません。
いかに間接的、部分的な情報を集めてきて、これらを組み合わせることを考えることが、ここでのリサーチの目的です。
ポイントは、情報は少ない方が良いということです。
つい不安になって沢山集めたくなりますが、そもそもの目的を意識することが大事です。
いかに多くの情報を集められたかではなく、相手に合意してほしいこと、アクションしてほしいことを、いかに少ない情報で達成できたかです。
また、根拠のレベルはその企画を説得したい人次第で変わることもポイントです。
企画に前向きなのか?後ろ向きなのか?
思考の癖として、感覚的なのか?理論的なのか?
などにより変わります。
③成果のレベルとまとめるイメージ
成果のレベルは、「スピード」、「網羅性」、「精度」の3つのバランスで決まります。
・検討段階では、スピードが最優先
・検証段階では、精度と網羅性
とそれぞれ変わってきます。
まとめるイメージは、
・ワードのメモレベル
・エクセルやパワーポイントでしっかりまとめる
・企画書のそのまま乗せるもの、チーム内共有のもの
といったイメージです。
リサーチだけでなく、全ての仕事に共通する考え方も得ることができおすすめです。
②「課題解決!マーケティングリサーチ入門」
大手調査会社が書いた、リサーチの入門書です。
ビジネスの課題に合わせて、リサーチ方法が紹介されているので
そのまま実務に活用できる非常に充実した内容です。
自分の課題と照らし合わせ、試しながら読むことで理解が深まります。
③「マーケティングリサーチの論理と技法」
リサーチの理論的基本を得ることが出来る本です。
ちょっと学術的だけれど、しっかりと理論から勉強をしたい人におすすめ。
具体的手法 ・分析スキルを学ぶ
具体的な手法や分析スキルについて、とくに学びが多く実務に活用出来ている本を紹介します。
④『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』
元P&Gのマーケターの方が書いた本です。
この本では、「顧客起点マーケティング」が提案されています。
それは、1人の顧客を起点に商品やサービスの新たな可能性をみつけることと定義されています。
たった1人の顧客の意見を聞くことを「N1分析」と呼びます。
N1分析を通して、人の心を動かせる商品・サービスの魅力や訴求の「アイデア」を見つけます。
定量的なアンケート調査や統計分析は、仮説の絞り込みやコンセプトの検証には有効ですが、それだけでは人の心に訴えて行動を起こしてもらうだけの強度のあるアイデアが出せません。
具体的な方法は下記です
①顧客ピラミッド作成:誰でもできる簡単な調査で顧客を5つのセグメントにわける
②セグメント分析:行動データと心理データから各セグメントの基本的な顧客特性を分析
③N1分析:セグメントごとの「1人の顧客」にインタビューして認知や購買のきっかけと深層心
理を分析
④アイデア創出:N1分析を元に、その顧客の行動と心理状態を変える「アイデア」を考案
⑤アイデア検証:アイデアをコンセプトに変換し、提供調査でポテンシャルを評価し実践し、顧客ピラミッドの動きを確認
顧客ピラミッドは現状を理解するのに非常に役立ちます
【顧客レイヤー分け】
・ロイアル顧客
・一般顧客
・離反顧客
・認知/未購買顧客
・未認知顧客
3つの設問で抽出することができます。
①そのブランドを知っているか?(認知)
②これまでに買ったことがあるか?(購買)
③どれくらいの頻度で購買しているか?(毎日/毎月/3ヶ月に1回1回/最近買ってないなど)
顧客ターゲット層に上記の調査をして、分類分けしていきます。
この3つの質問をするだけで、目の前のひとであってもピラミッドのどこかに分類することが出来ます。
マーケティング課題に合わせてターゲットを決め、深くN1分析を行っていきます。
【マーケティング課題】
・さらなるロイアル化(リアルユーザーに聞く)
・ロイアル化(一般ユーザーに聞く)
・購入経験者へのリターゲティング(離反ユーザーに聞く)
・接触あり未購入者へのリターゲティング(認知・未購入層にきく)
・新規顧客化(未認知層に聞く)
N1分析は、「いつ、どのようなきっかけで、ブランドを知ったのか?買ったのか?ロイアル顧客化したのか?」を聞いていきます。
このN1分析がとにかく使えます。
自分なりに応用して、実務でも何度も活用してます。
ターゲットにしたいと思う実在する人に話しを聞きます。
実在する人なので、リアルな声が拾えます。
「現状の生活の不はなにか?」
「理想に思っていることは何か?」
の2点にしぼりヒアリングすることで、ニーズをつかめます。
N1だと確からしくないのでは?
市場規模がわからなくない?
という疑問がわくと思いますし、実際に何度も質問されてきました。
しかし、実際世の中のヒットは多くの「目の前の人のニーズに答えたい」または「自分の理想をかなえたい」という思いから生まれています。
ただ、規模を推定することは可能で、確からしさを上げる説明は可能です。
例えば、聞いた人の属性を抽象化することにより、規模を推定していきます。
サーカー好きな、結婚していて子どもも居る、30代の会社の同僚にヒアリングしたとします。
その人はもちろん1人ですが、サッカー好き / ファミリー層 / 30代男性
と設定すれば、ボリュームが出て来ます。
⑤『意思決定のための 分析の技術』
マッキンゼーでコンサルタントをしていた著者が、分析の技法についてまとめた本です。
有効なアウトプットを出すために、どのような視点で分析していけば良いか?がわかります
分析を
「物事の実態 / 本質を正しく理解するための作業」
と定義しています。
ビジネスの場面では、
「正しい認識・判断により、正しい対応をする」
ために分析をします。
分析には下記9つの視点が大事です。
分析の基本の4つ
①大きさを考える
②分けて考える
③比較して考える
④時系列を考える
そのバリエーションとして
⑤バラツキを考える
⑥プロセスを考える
⑦時系列を考える
ビジネスの舞台であるや「社会」に対して
⑧不確実・ファジーな課題に積極的に取り組む
⑨人間の課題に積極的に取り組む
とくに基本の4つはめちゃくちゃ重要です。
とくに初めてリサーチ業務に取り組む場合、現象やデータを見たときに、この4つにあてはめて考えることをクセづけることが大切です。
リサーチに役立つ思考法を学ぶ
リサーチに役立つ思考法が学べる書籍を紹介します。
⑥『リサーチ・ドリブン・イノベーション 「問い」を起点にアイデアを探究する』
MIMIGURIというコンサルティング会社を経営している著者が書いた本です。
Re-Saearch
視野を広げ、新たな可能性を発見するために繰り返される
その定義のための全体感として下記のステップを上げています。
①問いを立てる
②データを集める
③データを解釈する
④合意形成
ポイントは「問い」です。
イノベーションは良い「問い」から、はじまります。
問いをデザインするためには2つのアプローチがあります
①課題解決型
目標と現状を設定し、その間にあるギャップを「解くべき課題としての問い」として設計します。
ビジネスの場面では、ほとんどこの手法により設定されています。
②価値探求型
人間や社会の本質についての問いです。
自分自身の関心をベースに、問いをつくっていくイメージで、哲学的なアプローチです。
⑦『仮説思考』
ボストンコンサルティンググループの代表を勤めていた、コンサルタントが書いた本です。
十分な材料があつまって居ない段階、分析が進んでいない段階で自分なりの答えを持つこと
を仮説と言います。
この仮説をもつ段階が早ければ早いほど、仕事はスムーズに進みます。
この本は、仮説の考えるために必要な要素を教えてくれています。
とくに、「仮説を立てるための頭の使い方」は非常に参考になります。
【仮設を立てるための頭の使い方】
①反対側からみる
1:顧客・消費者の視点をもつ
ユーザーはどんな人であり、どこでなぜ自社の商品を購入しているのか?使っているのか?を考える
2:現場の視点で考える
実際に現場に行って、具体的な事実を経験し観察する。
3:競争相手の視点で考える
もし自分が競争相手の社員だったら、自社をどう見ているか?を考えてみる
②両極端に振って考える
両極端に振って考えることにより、物事の本質が見えてきます。
無数の事象や関係の中から、何が最も重要で決定的なことかを判別するスキルを磨けます。
そして、仮説を立てる力を伸ばすトレーニングを日々意識することで実力がついてきます。
【仮設を伸ばすトレーニング】
①だからなに?を常に考える
身の回りにある現象があきたときに、それが意味することは何か?を考え続けること
②なぜ?を繰り返す
日常的に、「なぜ?」を繰り返してふかぼる
まとめ
以上、リサーチ力をのばしてくれる書籍を紹介しました。
リサーチは、ビジネスマン全員に必要な能力だと思っております。
そして、必ずしも、調査会社が行うアンケート調査やインタビュー調査だけがリサーチではありません。
そして目的と手段が、切り離されがちなのもリサーチです。
「外資系コンサルのリサーチ技法」で紹介されているプロセス
①目的の確認
②リサーチプランの設計
③リサーチの実行
④アウトプット化
この基本を意識しながら、日々の「リサーチ」に関連する業務を推進したいですね!
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