●なんだか疲れている
●いろんな不安が常にあってなかなか心が晴れない
●仕事に、プライベートに忙しく自分の時間がなかなかとれない
といった方にむけて、「疲れたときに効く小説」を紹介したいと思います。
この記事を読むと
●疲れている理由が整理できる
●疲れているときの対応法がひとつ手に入る
●本のエッセンスから、少し心が和らぐ
といったことが得られます。
情報が多く、日々世界の情勢が変わり、コロナの影響も長引いていて
なかなか終わりが見えない。
現代は、特に「疲れる」条件がそろっています。
何を隠そう私も、現在進行形で疲れています笑
30代中盤、仕事にも家庭でも、責任が一番押し寄せてくる世代ということもあり
日々、何かに追われている気がします。
私自身、マーケティングの仕事を10年以上行っています。
プレッシャーのかかる局面は多数あり、そのたびに心そこから疲れてまいりました。
そんな時に、助けてくれたものが「本」です。
学生時代から本が好きで、どんなに忙しくても年間150冊くらいは本を読んでいます。
学生の時は300冊以上読んでいました。
基本的に新しい本が読みたく、再読する機会は多い方ではないのですが
疲れたときに読みたくなる本があります。
今回は、疲れたときに何度も読んできて、そのたびに心を軽くしてくれた
小説を紹介したいとおもいます。
疲れた時に読みたい小説10選
【疲れた時に読みたい小説10選】 ①「職業としての小説家」村上春樹 ②「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」村上春樹 ③「へらへらぼっちゃん」町田康 ④「宇治拾遺物語」町田康 ⑤「頭の中がかゆいんだ」中島らも ⑥「一私小説書きの日乗」西村賢太 ⑦「池波正太郎の銀座日記」池波正太郎 ⑧「室内生活 スローで過剰な読書論」楠木建 ⑨「絶望名人カフカの人生論」 ⑩「失踪日記」吾妻ひでお
そもそも人は何で疲れるのでしょうか?
あまりに疲れていたときに、
そんなことを考えて、さらに疲れた経験があります。
その時に感じたことが、
「何かを動かし続けると疲れるのではないか?」
ということです。
運動がわかりやすいです。
体を動かし続けると、当然疲れます。
仕事や勉強などで、頭を使いすぎても疲れを感じます。
※実は脳は疲れてないという説があります。
疲れを感じるのは「目」が疲れているからだと。
なので、脳みその疲れを感じたら、しばらく目を閉じてみると良いそうです。
脳研究の第一人者である池谷教授と糸井重里氏共著の「海馬」という本に書かれていました。
そして、心の疲れはなかなか取れにくく残りやすいです。
小説を読むことは心の疲れに効くと思っています。
①職業としての小説家 村上春樹
他人と比較しない。
会社だけが全てではない。
自分に正直に生きる。
と、何度も見聞きした言葉、やりたいけれどなかなかできない言葉、
それを地で行く姿を、押しつけがましくなく、書かれているのが本書です。
村上春樹さんのエッセイには、嘘がありません。
自分を良く見せようというところが全くなく、逆に自分を卑下して見せようという
ところも全くありません。
まさにありのままの姿が心地よい文章のリズムでかかれている。
読み進めると、自然と、もっと楽に考えてもいいのかもなと思えます。
村上春樹さんは、30歳のとき、神宮球場で野球のヤクルトの試合を外野席で
ビールを飲みながら観ているときに、小説家になろうと決めたと書いています。
小説の書き方として、朝4時台の早朝に起きて、コーヒーを飲みながら執筆をします。
書きたいときも、書きたくないときも、毎日毎日決まった枚数を書くと言います。
ルーティーンと創造性と一見矛盾するような行為のなかから、深く美しい物語を作り続けていることが興味深いです。
②世界の終わりとハードボイルドワンダーランド 村上春樹
村上春樹さんの小説は、内容は凄く不思議だったり、複雑な箇所もあるけれど
驚くほど読みやすいです。
そして、物語の内容を読みたいというよりも、村上春樹さんの文章を読みたいと
思います。
なぜだろうと考えていたところ、それは文章のリズムにあるのではないか?と
思いました。
読み進めていること自体が心地よくなる文章のリズム。
ご本人も、文章には絵画的なものと音楽的なものがあり
自分は音楽的だとおっしゃっていました。
クラッシックやJazz、ロックポップスまで、様々な音楽が
小説に登場します。
世界の終わりとハードボイルドワンダーランドは、
2つの世界を交互しながら物語が進みます。
ハードな局面にも料理や食事、家事といった日常を淡々と
進める主人公に、憧れを抱きました。
心地よい文章のリズムと心地よい日常の描写が、心をいやしてくれます。
村上春樹さんは心に効く作家だと思います。
③へらへらぼっちゃん 町田康
平日は朝から晩まで働いて、帰ってもただ寝るだけで一日が終わる。
たまの休みを充実させたくて、いろいろと計画を立てるのだけれども、結局は一日中寝てしまった…
という経験を何度もしました。
そのときにくる何ともいえない罪悪感と、明日からまた仕事だという憂鬱な気持ち。
一日中寝ていたのにもかかわらず、まだ疲れている。
そんな何にもできなかった休日の夜にぴったりなのが、元パンクロッカーで芥川賞作家でもある町田康さんの「へらへらぼっちゃん」です。
まず一日の使い方が痺れる。
朝は10時から、TVで時代劇を見始める。
昼ご飯を食べて、午後もTVで時代劇を見る。
夕方になっても、TVで時代劇を見ながら、焼酎を飲む。
そして机の上で少し踊る。
言葉の使い方やリズム感が独特で、
はじめて本を読みながら声を出して笑いました。
町田さんの本を読んでいると、
「こんなに真面目に日々を過ごさなくて良いんだよ。
おもしろおかしく日常を捉えようよ。」
と言われているみたいで、心が楽になります。
④宇治拾遺物語 町田康
町田康さんは現代小説ももちろんおもしろいですが、
日本の古典を魅力を数倍にして現代に蘇らせている
NEO古典ともいえるジャンルを確立したと思っています。
宇治拾遺物語は、「こぶとり爺さん」など誰もが知っている物語を
集めた本です。
下記、引用です
それをきっかけに大踊り大会が始まってしまって、下座から順に鬼が立って、
「奇妙な鬼に瘤を除去される」宇治拾遺物語 町田康
アホーな踊りを次々と踊った。
軽快に舞う者もあれば、重厚に舞う者もあった。
非常に巧みに踊る鬼もいたが、稚拙な踊りしか踊れない鈍くさい鬼もいた。
全員が爆笑し、全員が泥酔していた。
その一部始終を木の洞から見ていたお爺さんは思った。
こいつら、馬鹿なのだろうか?
そのうち、芸も趣向も出尽くして、同じような踊りが続き、微妙に白い空気が流れ始めた頃、
さすがに上の鬼に立つだけのことはある、いち早く、その気配を察したリーダーが言った。
「最高。今日、最高。でも、オレ的にはちょっと違う感じの踊りも見たいかな」
リーダーがそう言うのを聞いたとき、お爺さんのなかでなにかが弾けた。
お爺さんは心の底から思った。
踊りたい。
昔話ってこんなに面白いのだと驚嘆をしました。
笑うことは、疲れを癒やす効果があると思います。
読書で得られる「笑い」は、自然と体に染み渡っていくような気がします。
⑤頭の中がかゆいんだ 中島らも
依頼されたことに、答える。
言われたことを、やる。
時間ないに、やる。
どれも大切だと教えられます。
社会人になる前から、学校でその重要性をたたき込まれます。
なので仕事をするときに、
「お願いされていることに答えない」
という可能性をまず消します。
中島らもさんの処女作「頭の中がかゆいんだ」は、
依頼されたこと、言われたこと、時間を全て無視して出来上がった作品です。
コピーライターであった中島らもさんは当初、広告に載せるコラムの執筆を依頼されていました。
その以来の趣旨を無視して小説を書いたことが、中島らもさんが小説家になったきっかけです。
はじめから無視するつもりはなく、依頼された通りに仕事を進めていたけれど、
コラムを進めていくうちに、小説を書いた方が面白いという結論に至ったのだと言います。
モノゴトの本質を追求できるか?
自分の内なる声に従えるか?
この質問にYESと答えることが、
日々をおもしろくするポイントのような気がします。
内容ももちろんとてつもなく面白いです。
家も家庭も仕事もっている主人公が家出をするという設定が、
「絶対に手放してはいけない」、「しっかりとしなくてはいけない」
という世の中が決めたルールを逸脱していて引き込まれます。
そして文章の中に突然現れる、言葉の羅列、ひとつひとつの言葉の関係がありそうで
ない。
アメリカのビート文学やシュルレアリズムに影響を受けていると、後日談で知りましたが、読んだ当初は、破綻しているようにもみえる、はじめて見る文体がとてつもなくかっこよく思えました。
拾い読みでどこかの文章を読むだけでも、引き込まれますし
全体として
「誰かが決めたルールを守らなくても良い」
というメッセージに勇気づけられる思いがします。
⑥一私小説書きの日乗 西村賢太
日記には不思議な魅力があります。
日記文学はYoutubeの「ルーティーン動画」と近しいものがあるのではないでしょうか。
人の日常を見ることは、安心感や癒しに繋がっていると思います。
西村賢太さんは、中学を卒業してから、日雇いの仕事で糊口をしのぎ
小説を書き、芥川賞まで受賞しました。
小説も自らを投影した主人公が出てくる私小説。
罵詈雑言がひしめき、けっして明るい話ではないのですが引き込まれます。
そんな西村さんの一日は、ほぼ決まっています。
昼過ぎに起きて、サウナで身を清めます。
食事を取ってから夕方過ぎから明け方まで、小説を書きます。
明け方から「宝」と自作のつまみで晩酌をする。
書けない時期はかかない、それが半年続いたりする。
そういったありのままの生活すら作品に昇華させていく姿
が垣間見れる。
「走りながら考える」
「すぐ行動する」
立ち止まらずに前に進むことが礼賛される現代において、
結構な時間立ち止まったり、時には戻ったり
そういう迷走にも味があり、良いんだと思えます。
⑦池波正太郎の銀座日記 池波正太郎
「シズル」という言葉があります。
主に、商品パッケージや広告表現に使われて
「美味しそうに感じる表現」
を指します。
商品の魅力を最大限引き出すには必須の概念になります。
銀座百点で綴られる日々は、「シズル日々」です。
第一食と表現される、朝ご飯
度々止まっている山の上ホテルでの食事
映画を見た後に立ち寄るレストラン
食のエッセイなどはあまり読んでこなかったし、
銀座日記は食エッセイではないのだけれども、
日常に現れる「美味しい食事」の魅力を感じることができます。
気分が落ち込んでいるとき、美味しい物を食べて寝るという解決策は
やはり最強です。
⑧室内生活 スローで過剰な読書論 楠木建
室内生活は書評です。
著者の楠木建さんは、「ストーリーとしての競争戦略」という名著を書いた
一橋大学の教授です。
紹介されている本も「ビジネス書」がほとんどです。
ここまで書くと、鋼鉄のようにカタい本をイメージされると思いますが
そんなことは全くありません。
紹介されている本の内容を勉強する
というよりも
読書の楽しさ、考えることの楽しさを感じることが出来る本です。
楠木建さんは無類の読書好きで、休みになると一日中本を読んでいると言います。
本を読む理由も、内容を知りたいという知識欲よりも、本をきっかけに思考をめぐらせたいという思考欲から読んでいると言います。
なので、内容をうけて、どう考えるのか?という視点で書かれています。
書評と言いながら、「このように考える」という思考のプロセスを楽しむこと
が出来て、とくにビジネス書やノンフィクションの楽しみ方の指南書になったいます。
コラムで紹介される、読書のスタイルがおもしろいです
・ヘビー級ミドル級ライト級の3階級を同時に読む
ヘビーに疲れたら、ライトを読みながら休憩する
・外国に出張にいったときは、観光などはせず、お菓子を買いベッドに潜り込み
ひたすら読書
などなど、室内生活の名の通り、「インドア×読書」の素晴らしさを実感できます。
身体的には非アクティブだけれども、思考的には非常にアクティブ。
読書は思考のアウトドア活動かもしれません。
⑨絶望名人カフカの人生論
どうしても駄目なとき、どんなものを見てもネガティブに考えてしまうとき
全てにイライラするとき
たまにあります。
そういう時に、徹底的に寄り添ってくれるのが
「絶望名人カフカの名言」です。
気分的に最下層に落ち込んでいるときは、長文を読むのもつらくなります。
この本は、いわば「アフォリズム」になっていて
珠玉のネガティブ名言が綴られています。
・ぼくはひとりで部屋にいなければならない
「絶望名人カフカの人生論」
床の上に寝ていればベットから落ちることがないのと同じように、
ひとりでいれば何事もおこらない
・ちょっとした散歩をしただけで、ほとんど三日間というもの、
疲れのために何もできませんでした
・ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず
ただ人間的な弱みしか持っていない
読み進めると、笑ってしまいます。
そして、自分んのネガティブもそこまでではないな、と感じます。
主観で考えるといたって真面目だけれども、客観的に捉え直すと
喜劇になっていることって意外とあります。
⑩失踪日記 我妻ひでお
この本は私小説的な漫画です。
吾妻ひでおさんの自伝のような内容で、
漫画家として華々しくデビューをしながらも、アルコール中毒も煩い
躁鬱も煩い、その間の失踪の様子が垣間見れます。
漫画家以外の職についたり、ホームレスのような生活を送ったりと
失踪中の描写も、とてつもなく面白いのですが
個人的には、漫画家としてありえない量の仕事をこなしていたときの話が
好きです。
カフェをオフィス代わりにして書く姿には、腕一本で生きていく姿が描写されていて
憧れのようなものも抱きました。
ハードな状況をコミカルに描き、エンターテイメントする。
その過程で、自分自身も解毒が出来ているのではないでしょうか。
自分の状況を客観視して、おもしろがる姿勢が持てるとと最強だと思います。
まとめ
疲れたとき、気分が落ち込んだとき、なんとなく心がもやもやするとき、
小説はゆっくりと寄り添ってくれます。
心が楽になる、「本質」を小説は教えてくれます。
■自分のものさしで考える大切さ
職業としての小説家
■「ひとつひとつの生活を丁寧にする」
世界の終わりとハードボイルドワンダーランド
■だらけた自分も許してあげる
へらへらぼっちゃん
■声を出して笑うこと
宇治拾遺物語
■世の中で言われる「〇〇すべき」を疑ってみる
頭の中がかゆいんだ
■立ち止まるときは思いっきり立ち止まる
一私小説家の日乗
■観る、食べる、寝る、エンタメが心を癒す
池波正太郎の銀座日記
■自分の頭で考えることを楽しむ
室内生活 スローで過剰な読書論
■ネガティブのエンタメ化
絶望名人カフカの人生論
■自分自身を客観的に観る
失踪日記
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